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kazの徒然日記

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図書戦SS「名付けられた約束」

こんばんは。あなたのkazです。
オフが忙しくなってくるととにかく脳内麻薬が激しく出る様です。
今はとにかく図書戦がいとおしい!

そう言う訳で、どういう訳だか。
図書戦SSを投下します。
ショート…じゃないかもしれない(笑)


別冊2以降、堂郁と手柴。
図書館での通常の妄想です。入れたい物を入れたらひたすらにながーくなりました。

















名付けられた約束




人はそれを、結婚と言う。
大切な人と一緒にずっと歩いていくと言う約束。

「手塚・笠原組より堂上班長へ。
 こちら異常ありません。引き続き巡回します」
手塚が堂上へ報告を上げる様子を片目に郁は周りに気を配る。
異常がなかったからこれからも異常はないだろうなんて気を緩めたりしてはいけない。それくらい常識だ。
手塚は短い言葉をいくつかインカムと交わしていたが最後了解と締め郁を振り返る。
「下行くぞ、笠原」
「うん」
郁は自然と先導する手塚の死角を補うように歩く。眼が良いことにも定評はあるが、それ以前に息があってきたことが大きいだろう。
努力家の手塚と感覚派の郁。不足だらけの一士時代から時に衝突しながらいつしか補い合いながら少しずつ成長してきた。
それでもまだ、インカムの向こう側へは届かない。
だからもっと、もっと良い部下でありたい。あの大きな背中を少しでも支えられるように。だからまずは、班長の指示をきちんとこなし期待に応えることからだ。

「笠原」
下のフロアに降りたところで声を掛けられる。
声の主は柴崎で、そう言えば最近ゆっくり話す機会が激減したことを思い出す。
「柴崎。…あ、違った、手塚三正って呼んだ方がいいの?」
この前の結婚式は良かったよねー、なんて思い出して微笑みながら郁は2人をそう茶化す。
「そうね、あんたが少ない脳みそフル動因して頑張ってくれたものね、堂上三正?」
精一杯のからかいは何倍にもなって戻ってくる傾向にあることを忘れていた。友人からは呼ばれなれない呼び方にうっと言葉を詰まらせる。
柴崎も郁同様に非公式には旧姓で呼ぶことで落ち着いている。
「お前、どうせ勝てないって解ってるのにどうしてコイツ相手に」
黙り込んだ郁にため息交じりの忠告を投げようとした手塚もまた突然言葉を詰まらせた。柴崎の満面の笑みが視界に飛び込んできたからだ。彼もまた柴崎相手にはまだ勝ち越せていない。手塚家のパワーバランスはほぼ決まったようなものだ。
「ところで笠原、休憩は何時から?」
「1230からだよ。柴崎は?」
「じゃあ一緒に食べましょ。このあたりで待ってるわ」
どうやら昼の約束を取り付けたかったらしい。そう言い置いてくるりと背を向けようとした、ところで。
「手塚三正、すみません」
明後日の方向から声が掛かる。思わず視線を声の方向に向けた郁と、そして。
「なぁに?」
「何だ」
声がシンクロした。
そう言えばこの場には手塚三正が2人居たことを思い出す。声を掛けてきた業務部の一士は慌てて頭を下げた。
「あ、すみません、手塚麻子三正に用事なのですが!」
自分に用事があると解っていた柴崎はひとつ頷き、ちょっとごめんと二人に断り後輩の話を聴きに行く。一方呼ばれなれた名前に反射的に返事を返した手塚は思わず眉間に皺を寄せた。
「手塚ー、慣れなきゃ駄目だよ。柴崎だって手塚三正なんだからさ」
気まずいのだろう同期にフォローするも、煩いと一言であしらわれてしまう。手塚にとって憧れの堂上一正に似てしまっているその反応に郁は大げさにため息をついた。
そんな仏頂面まで堂上教官の真似しなくたっていいのに。
そうぼんやり考えていると再度煩いと低い声で睨まれた。駄々漏れだったらしい。郁は誤魔化すようにあいまいに笑って見せた。
「心配しなくたって、そのうち呼び分けは難しくなくなると思うわ。あたしが図書隊初の女指令になるまでの辛抱よ」
何処となく気まずい空気を吹き飛ばしたのは他ならぬ柴崎の自信に満ちた言葉で、郁と手塚は思わず顔を見合わせて苦笑したのだった。

「あ、おねえちゃん!としょかんのおねえちゃーん!」
目立つ3人に次に声を掛けたのは小さな女の子だ。
図書隊のお姉ちゃん、に値するだろう人物もこの場には二人いるのだがこの場合は子供達に絶大な人気を誇る郁の事だ。自分ではない自覚のある柴崎は視線を向けるに留め、郁が振り返る。顔なじみの少女の顔を確認してにっこり笑うも、すぐに顔を叱る顔に変える。少女に目線を合わせると口元に人差し指を当てる。
「こーら。図書館では?」
少女はあっ!と慌てて口を押える。
「としょかんではひそひそばなし!」
少女にしては声を抑えたのだろう、先ほどよりも少し小さな声になった。ようし良い子と郁が頭を撫でる。
「今日はどうしたの?」
「あのね、あたらしいえほんをかりにきたの!」
いっしょにいこ!と児童書エリアへ手を引く少女に笑顔で応じる。小さな利用者からの可愛らしいリファレンスの依頼を断ることなど出来るはずがない。手塚にごめんと手を合わせると行って来いと軽く手を振られるからありがとうと声を出さずに口の動きだけで礼を言った。

「精神年齢が近いからかしらね?」
どんな本を探してますか?あのね、えっとね。と楽しそうな2人の姿が離れていくのを見送りながら柴崎が楽しそうに笑う。同意を求めた手塚はと言うとごく真面目な顔で二人を観ていて、その生真面目さにも柴崎は笑いを隠せない。手塚は未だに子供との距離感を掴みかねているのだろう。士長昇進試験の頃とは比べ物にならないくらい子供の相手が無難にこなせるようになった今でも。
「笠原には笠原の、あんたにはあんたの良いところがあってそれを伸ばせって言われてるんでしょ?それでいいじゃない」
小柄な柴崎が精一杯背伸びをして、えいと手塚の頭を叩く。上官のとは違うその手に、手塚は仏頂面を続けている。どこか居心地の悪そうなその表情は拗ねているものだと気付いていないのは郁くらいだ。
「拗ねないの、光」
背伸びするのに疲れたのかぽんぽんと胸元を叩く柴崎に手塚はいよいよ仏頂面を続けられなくなった。煩いと呟く顔が少し赤い。
「でも子供をどう相手してどう躾けていくのかを覚えてもらうのはいいことだわ。あたしたちにもいずれ必要となることだし」
さらりと言われた柴崎の言葉に手塚は目を丸くする。夫婦なのだからそう言う話をしても問題ないじゃないと柴崎は思う。だがそう言う朴念仁な所も好きなのだから仕方がない。むしろそのままでいて欲しいと思う。
「…善処する」
これでもかと顔を背けた手塚の隠しきれなかった赤色の耳を確認すると、手塚に見られていないことを確認した柴崎も幸せそうな笑みが浮かんだ。
そしてふと、そんな展開になれば自分は退職するか休職する必要があり、きっと昇進だって置いていかれるわけで今みたいにくすぐったい悩み事もなくなるんだろうなと気付いたが、今はまだ幸せな悩みに浸っていたくて黙っておくこととした。

あの頃のあたしに言ってやりたい。
誰にも見つけてもらえなくて、誰かに見つけてもらいたくて、それでも素直になれずに仮面を被り続けていたあたしに。
見つけてもらえたあたしがどれだけ幸せになれたかということを。


*


「…そんな事があったのか」
晩酌のビールを楽しみながら堂上が相槌を打つ。そうなの、と郁がクスクス笑った。
「手塚と柴崎のとこは大変だよねー。両方とも手塚三正なんだもん。手塚は自分のことだと思ったから居心地悪そうだったけど。柴崎はもうちゃんと『手塚三正』になってんの」
夕食の洗い物を済ませ堂上の隣に腰を下ろした郁が微笑ましそうに状況を説明すると堂上も釣られたように笑みが浮かぶ。
「柴崎は器用そうだからな。誰かと違って」
「誰かって誰のことー!?」
軽口に膨れる郁を宥めるようにぽんぽんと頭を叩く。それでも郁はまだ膨れたままだ。
そりゃ柴崎はあたしと違って優秀だもん。
郁がそう心の中で愚痴っていると堂上に肩を抱き寄せられる。
「俺はお前が良い。…それじゃ足らんか?」
業務中には聴けない甘さを含んだ声に郁は少しの間を空けてひとつ頷いた。膨らんだ頬は堂上が軽くつつくことで促されて大げさに息を吐き出す。我慢しきれなかった郁の表情がみるみるうちに嬉しそうな笑顔に変わればほっとした堂上がつついたお詫びに頬に口付けた。
「あたしの良いところは篤さんが知っててくれれば充分です」
そう言ってはにかむ郁に堂上は思わず口ごもる。そんな堂上の様子に郁は首を傾げる。
あたし、また変なこと言っちゃったのかな…?
そんな不安げな言葉が耳に入って正気に戻った堂上はバツが悪そうに顔をそむけた。
「お前、そう言う可愛いことを突然言うな阿呆」
精一杯の仏頂面はごまかしの利かない赤色を乗せていて、中々見られない堂上の表情を一目見ようと追いかけてくる郁を堂上はどうにかいなす。5つも年下の惚れた女にそんなかっこ悪いところを見せられるかと言う男の意地を理解して欲しいものだが、そんな所も可愛いと思ってしまうのは仕方のないことだろう。心の中でそう開き直るとくるりと郁を振り返り、油断しきった妻へはその流れのままヘッドロックを決めてやる。
「ちょ、篤さんタンマ!」
「誰が待つか阿呆!デリカシーのない奴には仕置きとしたもんだろう!」
「ごめん、ごめんってばギブギブー!!」
「よし」
郁のギブアップで腕を緩める。スキンシップが過激な事は堂上家の日常風景である。もー!篤さんの馬鹿、と郁は拗ねながら後ろのソファーに身を投げる。
全く、とため息をつきながらもまんざらでもなさそうに篤は晩酌へ戻る。その背中に郁は思わず目を引きつけられる。
広くて、大きな背中。追いつけない背中。…追いつきたい背中。
「ちょっとね、羨ましかったんだ。柴崎と手塚が。あのふたりはきっとおんなじペースで昇進してく。その度に呼ばれ間違いしたりして。自分の事だと思ったら相手の事だったりして。そんなくすぐったいの、うちはないなーって」
どこか寂しそうな郁の言葉。堂上は晩酌の手を止めて郁を振り返る。膝の上に置かれた郁の手に手を重ねて、優しくしっかりと握る。
郁はそんな堂上の顔を見て少し苦笑する。
「ごめん、篤さん。そんな顔をさせたくて言ったんじゃないの。確かに柴崎たちの関係は羨ましいけど、あたしは篤さんが良い。篤さんがあたしが良いって言ってくれたみたいに」
堂上はまっすぐ郁の目を見る。郁の気持ちを心を読み取るように。だから郁はその視線を反らさず言葉を続ける。
「王子様を追いかけて図書隊に入って、そこで出会った堂上教官の背中を睨みつけて走り続けてきた。それでも、今でもまだまだ追いつけない広くておっきな背中はあたしの憧れなの。あたし篤さんの背中大好き」
郁の言葉に堂上はいよいよ堪えきれなくなった。どうにでもなれと言わんばかりに郁の腕を引いて細い身体を抱きしめる。郁も大好きな背中にそっと腕を回す。
「…全く、お前には勝てる気がしない」
堂上は晩酌のビールの泡が消える事も気にせず、ただいとおしい妻を堪能することに専念するのだった。




大切な人と一緒にずっと歩いていくと言う約束。
幸せになる為の約束。





----------


ようは「手塚麻子三正」って呼ばせたかっただけです(笑)
別冊2は柴崎が可哀想すぎて辛かった…!
でもどうか柴崎に幸せになって欲しいんです。
そして堂郁が鉄板なのはもういわずもがな!

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ぴくしぶ、はじめました。





面白そうなので追加してみました。
超鈍足更新予定(笑)
HN:
カズマヤエ
性別:
女性
職業:
残念な事務員
趣味:
絵描き・妄想・ゲーム
自己紹介:
お絵描きと妄想とゲームが大好きなどこにでもいるごくごく普通の残念な事務員。絵は遅筆、妄想を形にするのが巧くなく、反射神経も推理力もない残念なゲーム好き。
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